くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

ヒュミラとレミケード、使ってみた感想 その2(2/2)

<<その1からの続き>> 


・生活する上での利点、欠点

普段の生活をするうえでは2剤に違いは感じないが、長期間自宅から離れる場合には2つの薬の差が顕著に出てくる。
その差、主にヒュミラの弱点についてを長々と書いていく。

レミケードの大きな利点は、8週間に一度しか薬剤を入れなくて良い点だ。
ヒュミラも通院ペースは8週ごとで良いが、2週ごとに注射をしなくてはならず、薬液は冷蔵庫での保存が必要である。

ヒュミラの「冷蔵が必要」という部分は持ち運ぶにも厄介で、
薬局で渡されたヒュミラバッグの説明書にも"医療機関から自宅まで "、"短時間補助するためのバッグです "、"長時間の移動や車内に放置しないでください "のような注意書きがされている。
患者が長距離を運ぶことはほとんど想定されていないようだ。

しっかりしたクーラーボックスに低温の保冷剤を詰めるという手もあるが、保冷剤が接触して薬液が凍結してもいけないし、飛行機で手荷物にするなら大きさの制限もあるので気を使いそう(カーゴは飛行時はキャビンよりも低温だが、積み卸し時に高温になる場合があるし、なにより海外は荷物の扱いがとにかく雑で心配になる)。
出張が多い仕事(必ず前乗りして冷蔵できるとも限らない)や、留学などで長く海外へ行くには不利な条件である。

私は食事の面で下痢になりやすいので、海外に長期で行くことはもう諦めている(薬品の持ち出しには医者に英語で一筆書いてもらう必要があるのも面倒)が、
どうしても注射を持って何時間もの移動をしなければいけないなら「ロガー付きの温度計をヒュミラの箱内に放り込んでおいて着いたら確認するか」くらいに思っている。
だが、やはり心配なので予定をやりくりして注射器を家の外に持ち歩かなくて良いように心がけている。


このヒュミラの冷蔵保存というのは停電時にも大きな欠点になる。
短期的な停電ならば扉を開け閉めしなければ冷蔵庫内の温度はほとんど上昇しないが、災害時など長期間停電が続くような場合には薬がダメになってしまう。

レミケードならば、停電が長期にわたった場合や、指定避難所など冷蔵庫が自由にならない環境で生活することになっても治療に直接的な障害はない。
また、かかりつけの病院が被災して別の病院で応急的に打ってもらう場合でも、8週ごとの通院なので通院回数は増えたりはしない。

一方、ヒュミラは、・・・どうするのだろうか?
冷蔵ができない環境になったら、2週間ごとに病院に行ってヒュミラを処方してもらい、その場で打つ。のだろうか?
そうなると、通院回数がグッと増えて負担も大きい。
一時的に別の薬剤に切り替えることは考えられない(休薬後の再使用は二次無効や強いアナフィラキシーのリスクをはらむ)ので、大きな災害に被災した場合は対処が難しいと感じている。

災害に関しては自分の意思だけでどうこうできる物ではないので、リスクとベネフィットを天秤にかけて考えるしかないと私は思っている。
私は大規模災害の発生頻度・被災頻度は低いので、そのリスクの方は取ることにしている。ヒュミラも死ぬまで使えるわけではないので、生物学的製剤がもっとも効果を発揮する発症初期に使って、良い調子を維持することを重く見た。
今の住居に引っ越しをした時点ではヒュミラを使用していなかったが、水害(:日本の災害の中で発生頻度が高い)のリスクの少ない場所を探し、急傾斜地もなるべく避けるようにした(横浜は坂の多い凸凹の地形なので出来る範囲で)ので、ソコはリスクの軽減にはつながったと思っている。

また、引っ越し時にも上手くしないと冷蔵できない期間が生じてしまうので、注意が必要だ。
就職に伴う学生の引っ越しならば一時的に実家の冷蔵庫に避難させて、引っ越し先が落ち着いたら回収することもできるが、
根こそぎ(?)引っ越す場合には、引っ越し先で冷蔵庫だけを先に稼働させておいてヒュミラや食品類を運んでおくような工夫がいる。
引っ越し日の前に使い切って、転院した先で処方してもらうという手も考えられるが、2週間後には打たなくてはならないので、スケジュールはタイトになりそう。
私の場合は引っ越し・転院時はレミケードを使っていたので、
転院先で検査をして病状を把握してからの投与でもスケジュールを乱すこと無く過ごすことが出来た。
引っ越しの直前に点滴をしてもらっていたので8週の猶予があり、心にも余裕があったが、「新生活の開始時に、見知らぬ土地で、はじめて訪れる病院で、2週間以内」だったとしたら結構なプレッシャーだったと思う。
もし、引っ越し当時ヒュミラを使っていたのなら、
引っ越し前にヒュミラを使い切り、引っ越し(=新居で冷蔵庫稼働)後に、転院前の病院で最後の処方を8週分してもらって、ヒュミラバッグごとクーラーボックスに入れて急いで新居に帰ったのだろうと思う。
いずれにせよ、よく計画を立てて行動しないと上手くいかないし、ちょっと緊張したとも思う。

こういった住環境の変化がない場合には、ヒュミラの自宅で保管できる点は利点にもなる。
レミケードの場合は病院の休診日や仕事の予定などで通院できず、8週ごとの投与間隔を厳密に守れない場合があり得るが、ヒュミラの場合は多くor少なく処方してもらうだけで簡単に診察日を前後させることが出来る。
学生ならば各種試験や発表、部活、受験などの動かせない予定があるだろうし、社会人なら"病院に行ってる場合じゃない時期"や "どうしても休むわけにはいかない日"に診察日が来てしまうこともあるだろう。それを簡単に回避できるのは気が楽だ。

実際、私もゴールデンウィークの休診で診察日が1週ずれた経験をしているが、1本多く処方してもらっていたおかげで何の問題も、心配も無く過ごすことが出来た。
生物学的製剤は多少血中濃度が濃くても問題は生じないが、濃度が薄くなる場合には二次無効の引き金になり得るので、それを知っているとスケジュールを守れないことは結構ストレスになる。そして、投与日が伸びると単純に辛い。
それを避けられるのは意外と大きな利点であるとも感じる。

 

・期間短縮には???

これは経験したことではないが、レミケードの期間短縮は"選ばなかった"ことなので、この内容についても書いておく。

レミケードやヒュミラが通常量で効果を示さなくなってきた場合、現在の対処として、倍量投与や投与期間の短縮がある。
いずれも薬剤の血中濃度を高く維持するための方法だ。
私の場合、ヒュミラについては通常量での治療が続いているが、
やがては効果が薄れる時が来てこれらのオプションを使うことになると思っているので、過去の経験も踏まえながらその場合のことも考えている。

私の場合はレミケードで倍量投与を選んだ経験があるが、
このときは倍量投与、期間短縮、ヒュミラへのスイッチの3つの選択肢があった。

「レミケードでもう少し足掻きたい」と思っていたのでヒュミラへのスイッチは除外して、残りの2つの選択肢について考えていたが、
「毎月、通院・点滴で半日潰れるのは非常に面倒である。倍量と期間短縮で効果に顕著な差は無いと言われているので、それなら今までと同じ通院ペースで済む倍量投与が良い」というのも倍量投与を選んだ理由の一つだった。

レミケードの場合、期間短縮は8週以下の間隔(私の場合は症状から4週間隔だっただろう)の通院・点滴を意味するので、通院回数が倍になり面倒になるのだ。

その点、ヒュミラは8本処方してもらうだけなので効果の検証が済めば以前と同じ通院のペースですむ。倍量の場合でも同様に、注射を処方してもらえば、通院回数が増えることはない。仕事を余分に休まなくても済み、職場に余計な気を使わなくても良いので気が楽だ。

この「通院回数が増えない」という点はお金の部分でも効いてくる。
特定疾患の医療費助成は月ごとに自己負担額の上限までお金を払うので、
4週ごとの通院となれば、8週ごとに比べて倍のお金を払うことになる。診察ごとにエレンタールを送ってもらうなら、自己負担する送料も倍以上になる。
病院が遠方ならば、移動にかかるお金もばかにならない。
医療費の助成でだいぶ助けられているとはいえ、進行していく病気なのだから将来のことも考えてお金は大事にしておきたい。
通院回数が増えないというのは、身体的だけでなく金銭的にも優しいのだ。