くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

ヒュミラとレミケード、使ってみた感想 その2(2/2)

<<その1からの続き>> 


・生活する上での利点、欠点

普段の生活をするうえでは2剤に違いは感じないが、長期間自宅から離れる場合には2つの薬の差が顕著に出てくる。
その差、主にヒュミラの弱点についてを長々と書いていく。

レミケードの大きな利点は、8週間に一度しか薬剤を入れなくて良い点だ。
ヒュミラも通院ペースは8週ごとで良いが、2週ごとに注射をしなくてはならず、薬液は冷蔵庫での保存が必要である。

ヒュミラの「冷蔵が必要」という部分は持ち運ぶにも厄介で、
薬局で渡されたヒュミラバッグの説明書にも"医療機関から自宅まで "、"短時間補助するためのバッグです "、"長時間の移動や車内に放置しないでください "のような注意書きがされている。
患者が長距離を運ぶことはほとんど想定されていないようだ。

しっかりしたクーラーボックスに低温の保冷剤を詰めるという手もあるが、保冷剤が接触して薬液が凍結してもいけないし、飛行機で手荷物にするなら大きさの制限もあるので気を使いそう(カーゴは飛行時はキャビンよりも低温だが、積み卸し時に高温になる場合があるし、なにより海外は荷物の扱いがとにかく雑で心配になる)。
出張が多い仕事(必ず前乗りして冷蔵できるとも限らない)や、留学などで長く海外へ行くには不利な条件である。

私は食事の面で下痢になりやすいので、海外に長期で行くことはもう諦めている(薬品の持ち出しには医者に英語で一筆書いてもらう必要があるのも面倒)が、
どうしても注射を持って何時間もの移動をしなければいけないなら「ロガー付きの温度計をヒュミラの箱内に放り込んでおいて着いたら確認するか」くらいに思っている。
だが、やはり心配なので予定をやりくりして注射器を家の外に持ち歩かなくて良いように心がけている。


このヒュミラの冷蔵保存というのは停電時にも大きな欠点になる。
短期的な停電ならば扉を開け閉めしなければ冷蔵庫内の温度はほとんど上昇しないが、災害時など長期間停電が続くような場合には薬がダメになってしまう。

レミケードならば、停電が長期にわたった場合や、指定避難所など冷蔵庫が自由にならない環境で生活することになっても治療に直接的な障害はない。
また、かかりつけの病院が被災して別の病院で応急的に打ってもらう場合でも、8週ごとの通院なので通院回数は増えたりはしない。

一方、ヒュミラは、・・・どうするのだろうか?
冷蔵ができない環境になったら、2週間ごとに病院に行ってヒュミラを処方してもらい、その場で打つ。のだろうか?
そうなると、通院回数がグッと増えて負担も大きい。
一時的に別の薬剤に切り替えることは考えられない(休薬後の再使用は二次無効や強いアナフィラキシーのリスクをはらむ)ので、大きな災害に被災した場合は対処が難しいと感じている。

災害に関しては自分の意思だけでどうこうできる物ではないので、リスクとベネフィットを天秤にかけて考えるしかないと私は思っている。
私は大規模災害の発生頻度・被災頻度は低いので、そのリスクの方は取ることにしている。ヒュミラも死ぬまで使えるわけではないので、生物学的製剤がもっとも効果を発揮する発症初期に使って、良い調子を維持することを重く見た。
今の住居に引っ越しをした時点ではヒュミラを使用していなかったが、水害(:日本の災害の中で発生頻度が高い)のリスクの少ない場所を探し、急傾斜地もなるべく避けるようにした(横浜は坂の多い凸凹の地形なので出来る範囲で)ので、ソコはリスクの軽減にはつながったと思っている。

また、引っ越し時にも上手くしないと冷蔵できない期間が生じてしまうので、注意が必要だ。
就職に伴う学生の引っ越しならば一時的に実家の冷蔵庫に避難させて、引っ越し先が落ち着いたら回収することもできるが、
根こそぎ(?)引っ越す場合には、引っ越し先で冷蔵庫だけを先に稼働させておいてヒュミラや食品類を運んでおくような工夫がいる。
引っ越し日の前に使い切って、転院した先で処方してもらうという手も考えられるが、2週間後には打たなくてはならないので、スケジュールはタイトになりそう。
私の場合は引っ越し・転院時はレミケードを使っていたので、
転院先で検査をして病状を把握してからの投与でもスケジュールを乱すこと無く過ごすことが出来た。
引っ越しの直前に点滴をしてもらっていたので8週の猶予があり、心にも余裕があったが、「新生活の開始時に、見知らぬ土地で、はじめて訪れる病院で、2週間以内」だったとしたら結構なプレッシャーだったと思う。
もし、引っ越し当時ヒュミラを使っていたのなら、
引っ越し前にヒュミラを使い切り、引っ越し(=新居で冷蔵庫稼働)後に、転院前の病院で最後の処方を8週分してもらって、ヒュミラバッグごとクーラーボックスに入れて急いで新居に帰ったのだろうと思う。
いずれにせよ、よく計画を立てて行動しないと上手くいかないし、ちょっと緊張したとも思う。

こういった住環境の変化がない場合には、ヒュミラの自宅で保管できる点は利点にもなる。
レミケードの場合は病院の休診日や仕事の予定などで通院できず、8週ごとの投与間隔を厳密に守れない場合があり得るが、ヒュミラの場合は多くor少なく処方してもらうだけで簡単に診察日を前後させることが出来る。
学生ならば各種試験や発表、部活、受験などの動かせない予定があるだろうし、社会人なら"病院に行ってる場合じゃない時期"や "どうしても休むわけにはいかない日"に診察日が来てしまうこともあるだろう。それを簡単に回避できるのは気が楽だ。

実際、私もゴールデンウィークの休診で診察日が1週ずれた経験をしているが、1本多く処方してもらっていたおかげで何の問題も、心配も無く過ごすことが出来た。
生物学的製剤は多少血中濃度が濃くても問題は生じないが、濃度が薄くなる場合には二次無効の引き金になり得るので、それを知っているとスケジュールを守れないことは結構ストレスになる。そして、投与日が伸びると単純に辛い。
それを避けられるのは意外と大きな利点であるとも感じる。

 

・期間短縮には???

これは経験したことではないが、レミケードの期間短縮は"選ばなかった"ことなので、この内容についても書いておく。

レミケードやヒュミラが通常量で効果を示さなくなってきた場合、現在の対処として、倍量投与や投与期間の短縮がある。
いずれも薬剤の血中濃度を高く維持するための方法だ。
私の場合、ヒュミラについては通常量での治療が続いているが、
やがては効果が薄れる時が来てこれらのオプションを使うことになると思っているので、過去の経験も踏まえながらその場合のことも考えている。

私の場合はレミケードで倍量投与を選んだ経験があるが、
このときは倍量投与、期間短縮、ヒュミラへのスイッチの3つの選択肢があった。

「レミケードでもう少し足掻きたい」と思っていたのでヒュミラへのスイッチは除外して、残りの2つの選択肢について考えていたが、
「毎月、通院・点滴で半日潰れるのは非常に面倒である。倍量と期間短縮で効果に顕著な差は無いと言われているので、それなら今までと同じ通院ペースで済む倍量投与が良い」というのも倍量投与を選んだ理由の一つだった。

レミケードの場合、期間短縮は8週以下の間隔(私の場合は症状から4週間隔だっただろう)の通院・点滴を意味するので、通院回数が倍になり面倒になるのだ。

その点、ヒュミラは8本処方してもらうだけなので効果の検証が済めば以前と同じ通院のペースですむ。倍量の場合でも同様に、注射を処方してもらえば、通院回数が増えることはない。仕事を余分に休まなくても済み、職場に余計な気を使わなくても良いので気が楽だ。

この「通院回数が増えない」という点はお金の部分でも効いてくる。
特定疾患の医療費助成は月ごとに自己負担額の上限までお金を払うので、
4週ごとの通院となれば、8週ごとに比べて倍のお金を払うことになる。診察ごとにエレンタールを送ってもらうなら、自己負担する送料も倍以上になる。
病院が遠方ならば、移動にかかるお金もばかにならない。
医療費の助成でだいぶ助けられているとはいえ、進行していく病気なのだから将来のことも考えてお金は大事にしておきたい。
通院回数が増えないというのは、身体的だけでなく金銭的にも優しいのだ。

 

ヒュミラとレミケード、使ってみた感想 その1(1/2)

ヒュミラを使用して1年半以上が経ち、いつの間にかレミケードを使用していた期間を超えていたので、それぞれの使用感を覚えているうちにその比較を書いておこうと思う。
生物学的製剤のスイッチに関する記事がよく検索されているようなので、この記事も切り替え時の判断の足しとなれば良いなと思って書いている。
ただ、この記事に限らず私の記事はどれもそうだが「あくまで個人の感想です」レベルの話なので読む人はご注意を。
クローン病は症状の個人差が激しい病気なので、よく似た症状の患者の情報でも全く当てにならないことはあり得る。



それぞれの薬剤での治療期間は、
レミケード:1年3ヶ月(最後の4ヶ月間は倍量で投与)
ヒュミラ:1年9ヶ月(2021年7月時点で治療継続中、9ヶ月目以降は免疫調整剤も併用)
となっている。

生物学的製剤による治療の順番としては、レミケード→ヒュミラの順。
ステロイドで症状が治まらなかったので、最初にレミケードを使い、効果が弱まり、副作用も強く出るようになったためヒュミラに切り替えた。
また、生物学的製剤での治療と合わせて鉄剤、ペンタサ、エレンタールも併用している。


・治療にかかる時間、手軽さ

レミケードは点滴、ヒュミラは自己注射と、身体に入れる方法が異なるので治療の受け方やかかる時間も異なる。

レミケードは、点滴を受ける数時間の間、点滴室で待つことになる。
副作用が出ないまま治療回数が増えていけば点滴の速度を徐々に速めることができるが、それでも2〜3時間くらいはベッドで横になっている必要がある。
私がかつて通っていた小さなクリニック(医師が一人しかいない)では、副作用を警戒してか投与速度をあまり速めなかったので、投与速度は医師の判断による。

点滴している腕の自由はあまりきかないが、私は読書をして過ごしたのでそれほど苦はなかった。点滴をつけたままでトイレに行くこともできる。
私は臆病なので副作用が怖くて点滴中に眠ったことはなかったが、「眠った」なんて話も聞くことはある。
私が通った2つの病院では、治療回数が増えても30分毎くらいで様子を見に来ていたので、寝ていても意識を失っていないか確認されそうではある。

点滴の間隔は8週間間隔が基本なので、8週ごとの定期的な診察と合わせて点滴を打つというスケジュールになる。

一方、ヒュミラは自己注射であるので、初回の注射以降は自宅で打つことになる。
希望すれば毎回病院で打つことも出来ると思うが、「通院しなくても良い」という利点が消えるのでそうしている人はいないだろう。

冷蔵庫で保管していた薬液を常温に戻す時間があるが、その時間を含めても30分以内にはすべての作業が終わる。実際に注射をしている時間は10秒程度で痛みもほとんど無いし、出血もほぼない。
今の注射器(ペン型ヒュミラ)は外から針も見えないし、ボタンを押すだけで薬液が注入されていくので非常に簡単に打つことが出来る。

注射の間隔は通常は2週間間隔。8週ごとの通院で4回分のヒュミラを処方してもらい、2週ごとに自分で打っていくことになる。注射時に使うアルコール綿などは各自で準備する(薬局で100個入のものが売っている)。



・効果・副作用の違い

一般的な効果や副作用ではなく、私の感じた違いを書いていく。
一般的なものが知りたい場合にはレミケードやヒュミラのインタビューフォームを読むと良い。

まず感じる違いはレミケードの効果の早さ。
レミケードは点滴中に一部の症状(腹痛や排便の頻度、頻繁な便意)が改善されるような即効性があった。
このレミケードの効果の早さについては、きちんとした統計は無いようだが、現場で診ていても有意性を感じるというような記載をしている論文もあった。

私の場合はヒュミラを使っているときの方が総じて調子は良いが、
それでもレミケード点滴終了後の「朝と明らかに調子が違うぞ!」という興奮や爽快感をヒュミラ後に感じたことは一度も無い。

ヒュミラは注射当日よりも翌日、翌々日と状態が良くなって、3日後くらいで最大になり、それが続く感じがしている(※ 調子が注射日まで下がらない(= 元々好調なので上り調子を感じられない)ことも時々あるので常に同じ感覚ではない)。

調子の下がり方という意味ではレミケードの方が大きく下がると感じている。
点滴後4週目くらいからは「調子が下り坂になったな」と感じることが多く、点滴前の2週間は便の状態や排便回数が悪くなり、肛門部の出血が起きるようになっていた。
この状態の落ちていく感じと、点滴後の爽快感が相まって最後の1週間くらいは治療日を待ち遠しく感じていたことを覚えている。
また、年末年始の病院の休業で9週間隔での投与になったことが一度あるが、"悪い状態"が一週延びるので、かなり辛かったと記憶している。

ヒュミラはこれまでのところそこまで大きく調子を崩すことはなく、注射前の2〜3日、便が軟らかくなったり、排便回数が少し増えることがある。

副作用については、ヒュミラではほとんど感じたことが無い。
腹部に2回続けて打った(右の腹部に打った2週後に左の腹部に注射した)際に少し赤くなって痒みがしばらく続いたぐらいである。
レミケードの場合は、バイオシミラー(インフリキシマブBS)に変え、倍量投与するようになってからは特に副作用が強く出るようになった。
発疹や呼吸困難のような症状が出たのでステロイドを点滴した後、速度を緩めて点滴をするようになった。
また、点滴日の夜や翌日に37℃台の微熱が出ることもあった。


<<続きは↓>>

cd-mo.hatenablog.com

 

このブログへ到達した検索ワードについて

(他の無料のブログでも同様だろうが)はてなブログでは、自分のブログへどのような検索ワードで到達したのかわかるのだが、この検索ワードを見ていると他の人の疑問に思っていることがわかって面白い。
自分と同じ疑問を持っている人や、思いも寄らなかった言葉(内容)で検索して辿り着いている人、リウマチなど他の病気の人(この場合は生物学的製剤の名前や二次無効関連のワードとセット)もいて、別の角度から考えるのに良いので、たまにではあるが、興味深く眺めている。

そんななかで、ちょっと気になる+他のページでは書いてなさそうな内容が2つあったので、この記事でその2つについて書いておこうと思った。何かの役に立つことがあるかもしれない。


1つ目は、「ヒュミラ 冷蔵庫に入れ忘れた」という検索ワード。

言葉を見ただけで「あぁ・・」と惨状が目に浮かぶ。入れ忘れに気づいたときの気持ちをおもんぱかると・・・、気の毒である。
私はコレをやったことはないが、いつかやりそうだなと思っているので、
注射日を診察日にし(帰宅したら注射をするので注射の存在をウッカリ忘れにくい)、帰宅して手を洗ったら真っ先にヒュミラの準備と収納をするよう気をつけている。

ただ、コレを調べた、あるいは今後ココにたどり着く人は、すでに"やってしまった"人であろうから、「やらないようにする方法」では手遅れだろう。
なので、私がするであろう対処を書いておく。

ヒュミラを冷蔵庫に入れ忘れた場合は、私ならば、急いで冷蔵庫に入れた後、まずはかかりつけの薬局に電話して状況を話し、その後の対応を確認する。
ヒュミラは薬局で受け取っているであろうから、トラブルや疑問があればソコの薬剤師に相談するのが一番手っ取り早い。
薬のことは薬剤師と話して、その指示に従うのがベストだ。
すでに薬局が閉まっている時間ならば、ヒュミラは冷蔵庫へ入れたままにし、翌日薬局に確認する。
たとえ注射日だったとしても、常温で長く置いたヒュミラを自己判断で使うことは絶対にしない。
と、いうのが私の対処である。
もし冷蔵庫が故障してヒュミラが常温に戻ってしまった場合にもおなじような対処になるだろう。

ヒュミラのインタビューフォームには5℃(冷蔵)以外に、25℃、40℃で数ヶ月保存した場合の結果が示されているが、
薬液の変質や、ペン型ヒュミラではペンの動作異常が認められている。
これらの異常がどれくらいの短期間で起きるのかまでは調べられていないが、「通常の方法以外で保存した製品は使うな」というのが基本方針だろう。

以下は私見だが、
効果が弱まるだけ(これだけでもヒュミラの血中濃度が下がるので二次無効の引き金になり得るというリスクがある)ならまだ幸運な方で、
妙な副作用を起こす別の物に変質していたり、変質で有効成分の免疫原性が上がって二次無効やアナフィラキシーの元になったら大事なので、
薬局に相談した結果が「もう一度処方してもらってこい(病院に行って処方箋もらってこい)」だったとして、さらに主治医がとても怖い先生だったとしても、素直に怒られてくるのが絶対に良い。
投与時のショックや二次無効(いずれもレミケードで経験)をやっている人間としては、ショック症状を医療機関外で起こすのは非常に恐怖を感じるし、
治療の切り札を自分の横着で失うのは今後の人生でずっと後悔することになるだろうから絶対に避けるべき、と感じる。

 

もう一つの気になるワードは、「クローン病」「平均寿命」と「レミケード」についての検索だった。

どういう意図でこの内容を調べようとしたのかはわからないが、クローン病患者の寿命に関しては興味(心配?)がある人も多いのではないかと思う。
そこへレミケードが加わっているのは、「レミケードの登場で長期予後はどうなったのか?」とか、「レミケード(生物学的製剤)を使って寿命が縮むことはないだろうか?」というような疑問なのだろうか。

クローン病患者の寿命に関してはもちろん私も興味があって、発症から早い時期に大雑把には把握している。
クローン病の長期予後と合わせて記事にしたいとは昨年から思っているのだが、資料集めも頭の整理もなかなか上手く進んでいない。

とはいえ、そんなことを言っていてもしょうがないし、見に来た人も愚痴を聞きたいわけでもないだろうから、
私のいい加減(記憶違いや誤認、過小・過大な理解があるかもしれない)な状態の知識と考えを書いていく。読み直して確認していないので文献の引用はしないが、根拠がある内容と私見とはなるべく分けて書こうと思う("思う"や"考える"という語尾の内容は私見)。

さて、クローン病患者の寿命だが、
研究結果には大きく分けて「短くなる」と「そんなに変わらない」という2つの結果があるようだ。

決定的な調査は無いようだが、この結果からでも考えられることはある。

まず、寿命が長くなることはなさそう。
「病気になったんだから当たり前だろ」と思うかもしれないが、「小食で腸に負担を掛けずバランスの良い食事をしたので寿命が伸びる」なんて結果になったら、"極めて細く、長く生きる"ことになって、違う意味での苦痛がありそう。
研究結果から、そういうことはなさそうである。

他にも、調査結果が多くないことや、「そんなに変わらない」という研究結果があることから、極端に寿命が短くなることはないとも言えそうである。
寿命のような超長期間にわたる研究は、労力の割に得られる成果が少ないので普通は活発に研究されることは無い(;研究者は成果が出なければ研究費どころかキャリアすら失う可能性があるので別テーマの副次的な成果としてしかやらないだろう)。
ただし、研究者が「患者の死亡時の年齢が若い」のように感じるほどであれば重要なテーマであるので調査、研究が活発になる。そうなっていないことと、「寿命に有意差がない」というような結果が出てくることから、寿命が短くなるにしてもたいして短くなっていないのではないかと考えられる。
私としては、「ガンのリスクが上がることや症状が進行していくこともあるので、実際は寿命は短くなっている。しかし、頻繁・定期的に通院や検査を行うため、一般の人よりも発見や治療が早くなる傾向があるので、結果的に平均寿命は同じくらいになる」のではないかと考えている。

近年の日本語の医学誌のIBDに関する話題では、高齢の患者に対する治療がひとつのトピックになっている(;患者数が多く、壮年での発症がある潰瘍性大腸炎が話題の主である事が多いがクローン病も扱っている)。

このことを考えると、
クローン病の患者数がぐんぐん増えはじめて5,000人を超えたのが約30年前、発症者の多くが10代から20代であることから、現在問題になりつつある高齢患者は、80年代かそれ以前の患者が多いであろう。
その、治療の選択肢の少なかった頃からの患者でも高齢になるまでクローン病を抱えながら生き続けていることがわかる。そういう意味でも、クローン病患者の寿命は決して短くない。

ついでに、寿命にはほど遠いが長期間の生存率のデータとして、発症後の10年生存率は97%くらいあるらしいのでやはりすぐに死ぬ病気ではない。
3%程度が亡くなっているのをどう見るかは難しい。治らないという病気の性質や若年(まだ未熟かつ残りの人生は長く希望の多い時期)での発症が多いことから病気を受け入れることができず、治療拒否や効果の不明な治療を受ける人もいるようなので、3%の人の詳細がわからないとなんとも言えない。精神医療との連携でこの数字は改善する可能性もあるのではと個人的には思っている。

また、余談だが、
私が適当に論文を読んでいる感じだと、80年代頃までは少人数ではあるが患者の統計の中に死亡の報告が見られることがときどきあったが、近年は特殊な症例意外ではほとんど報告されない印象がある(近年は、標準的な治療をして若い年齢で死亡したならその症例だけを詳しく調べて論文になるくらい死亡例が少ない)。
生物学的製剤の登場で難治性の患者の治療が進んだことなどで生存率は改善した(QOLはまだまだだろうが)のではないかと思っている。


生物学的製剤の長期的な効果については明瞭な結果は出ていないだろう。
クローン病に効果のある生物学的製剤として最初に承認されたのはレミケードで、
日本で承認されたのが2002年(承認の早いアメリカでも90年代終盤からしか使用されていない)であるし、現在の維持投与が主流になってからは15 年程度の時間しか経っていない。
寿命の議論をするには短すぎる期間である。

また、「連続使用することで病態がどうなったか?」というような研究でも未だ有効なサンプル数が少なく明瞭な結果が出ないのではないかと思われる。

その理由はいくつか考えられる。

レミケードはキメラ抗体であるので二次無効の症状が出やすく、10年以上のような長期間継続して使い続けられている人はかなり少数であろうこと。
(※ 「レミケードとヒュミラを連続して使っている」ではダメ。レミケードが良かった(or 悪かった)のか、ヒュミラが影響したのか、2つをリレーしたことで何か起きたのかがわからないので、この研究の基本は、レミケードあるいはヒュミラ単剤の連続使用データが無ければ意味をなさない。そしてそれを取るのが難しい)

レミケードは生物学的製剤としてもかなり初期のものなので、出始めの頃は一般の医師に使用に対する心理的な抵抗があったのか、レミケードの効果や機序を説明する論文が医学誌に繰り返し載っている。
初期の頃は使用者自体が少なかった(=長期使用している可能性のある患者の母数自体が少数)可能性もある。

当初は生物学的製剤を最後の切り札として使っていたことも長期的な効果の評価を難しくしている。
現在は比較的短期間でステロイドなどの治療に見切りを付けて生物学的製剤の使用を開始するが、かつては既存の治療を繰り返してどうしようもない場合に最後の切り札的に使っていたようだ。
生物学的製剤は症状が進行した組織を元に戻す効果は無いので、腸管がキレイな発症初期に使った方が効果が大きいということがわかっている。
病歴の長い、腸管での症状が進行した患者が主であった頃からのデータでは、たとえ長期使用している患者が一定数確保できても、本当の意味での評価が出来ない。

そんなことがあるので、
レミケードやヒュミラ(これも近年は最初の生物学的製剤として使うことが増えたが、出始めの頃は実績のあるレミケードを選択したがったようだ)の長期使用者の数がある程度増えるまでは、その長期的な効果については述べられないだろう。
ただ、20年経っても積極的に使われ続けているということは、継続使用しても大きな問題はなく、少なくとも以前の治療より効果が高い場合がある(短期的には手術率が減るという記載もある)、ということは言えそうである。

つまり、今言えることは、
レミケードを使っても、平均寿命はクローン病では無い人と比べて、人並みか少し短い(ただし、今後の研究によっては「人並み」が優勢になったりや「寿命は昔のデータと同じぐらいだが良好な期間が長く続く」のように良い方向に傾く可能性はある)ということだろう。

 

 

ヒュミラ 43〜45回目 その2(2/2)

<<その1からの続き>>

 

一通りの問診が終わって「状態が落ち着いていていいね」と言われて、
「薬が効いていて本当にありがたいです」、「うん。ありがたいねー。このまま行ってくれるといいねぇ」とやりとりをする。

今回も体調に変化はないので、これまで通りの治療を継続するということになり、薬の量を確認しながら、処方してもらう。

最後に、「(この体調なら)(新型コロナの)ワクチンは打っても大丈夫ですよね?」と確認した。
主治医の答えは「うん。クローン病だから打ってはいけないということはありません」という科学者らしいものだった。
明確な肯定では無いのでこの回答がイヤな人もいるかもしれないが、私にはこういう言い回しの方が信用できる。どの分野でも専門家は、よほどのことが無い限り断定的な答え方をしなくなるものなのだ。これは海外でも同じで、助動詞を使ったりして完全な断定形では答えなくなる(専門家として本気で調査・研究すればするほど様々な事態が考えられ、1つの"絶対的な解"が無いことがわかっているから)。
主治医は続けて、「アレルギーが出るかは打ってみないとわからないところがある。それはその場で対処するしか無い」とも答えて、
「(私が希望しているの)だから打っても良いと思うよ」とのことだった。
クローン病やその治療の観点からは特別な問題がないということがわかったので、「なるほど。わかりました。では、券が届いたら適宜打つことにします」と答えてこの会話は終わりにした。

診察が終わると、「今日は使用済みの注射器を忘れてきちゃったので、回収袋だけください」と言ってヒュミラの回収袋だけをもらってお礼を言って退出した。

診察室を出ると向かいの席から小さな子がややたどたどしい感じで私(開いた扉?)に向かって歩いてくる。
診察室に入ってしまわないように通せんぼをしながら素早く扉を閉めて、
目の前でクイッと曲がってからは不規則に動く子供に注意しながらヒョイと躱して行こうとすると、
もう一人の子を抱えながら座っていた母親がすぐに気づいて子供を呼び止めながら「すいません」と謝られた。
「2人の子連れで病院は大変だよなぁ」と思いながら、「いいえー」と笑顔で答えて会計へ向かった。
小さい子を見ると心が和むので気持ちよく会計へ向かったが、病院、特にこんな科がある病院では和む機会などない方がみんな幸せだろう。

会計へ着くと謎の機械が置いてあり、それの扱いに少し苦労している患者さんも居るのが目に入った。
「何の機械だろう」と好奇心が湧いてきたが、操作している人がいるのに後ろから覗くのも悪いと思い我慢する。
しばらくして名前が呼ばれて会計窓口へ行くと、診察券や受給者証、検査結果などを渡されて、会計はさっき見た機械でしてくださいとのことだった。

さっそく機械に診察券を入れて会計するが、操作しながらクレジットカードが使えるようになったことに気づいた。
「一昨年の引っ越してきたときにコレがあったらレミケード代を払うのが便利だったのになぁ」と思いながらクレジット決済を行って、印刷された領主書を回収して薬局へ向かった。

薬局ではエレンタールをすべて送ってもらうことにして、ヒュミラバッグを忘れてきたことも伝える。
以前忘れた際は使い古しのバッグが出てきたので、今回もそうだと思っていたのだが、新品のバッグを出しているのを見て、なんか申し訳ない気持ちになる。
今回はキャリーカートを組み立てる必要が無いので、フレーバーを詰めたりしながらゆっくり待って、薬の量、内容を確認して帰宅した。

 

 

【43〜45回目の体調のメモ】
5/16(月) 便はやや軟らかく、朝出血あり。出血は夕方には止まる

43回目、5/19(水) 9:45頃、左の太ももに注射。朝の時点から便の状態は良い
5/21(金) 便はやや軟らかく、出血少し
5/23(月) 便の状態は良い
5/25(火)便はやや軟らかい
5/26(水)、27(木) 形のある良い状態の便
5/28(金) 朝から軟らかめ、昼前に下痢。前日夕飯のガパオが良くないか
5/29(土) 朝、便の状態回復も夜、下痢(昼食は中華を外食)
5/30(月) 朝は良いが、夕方から夜にかけて下痢。以降、2日は便の状態良い

44回目、6/2(水) 9:35頃、左の腹部に打つ。朝、便は軟らかい状態
6/4(金) 便の状態は前日から良いままだが、夜わずかに出血
6/6(日) 昼過ぎから下痢。出血少しあり
6/7(月) 便の状態は回復。以降、良い状態が続く
6/9(水) 免疫調整剤飲み忘れ。便の状態、回数とも良い状態が続くが午後から夕方にかけて右半身側へそやや上に鈍く弱い痛みあり
6/10(木) 夕方、多めの出血
6/12(土) 良い状態続く

45回目、6/16(水) 10:45頃、右のふとももに打つ。朝から便の状態は良いまま
6/17(木) 便は軟らかい
6/18(金) 朝〜昼過ぎ下痢、朝、少し出血
6/19(土) 朝、便の状態かなり良い。これ以降、良い状態が続く
6/22(火) 午前中、排便回数が多く、やや柔らかい。その後は回復。
6/27(日) 便の状態はやや軟らかくなる。この状態が水曜まで続く

ヒュミラ 43〜45回目 その1 (1/2)

前回の診察から7週間空けて6月30日に診察を受けに行った。
今回から予約の時間を少し遅らせて9:30にしているので、家を出るのも以前より30分遅い。
前日の雨はあがっていたが、所々地面が濡れているので
「タイヤがグチャグチャになるのはイヤだ」と思い、エレンタール運搬用のキャリーカートは持って行かないことにした。

今回から乗る電車は、横浜到着が9時を過ぎるのでかなり空いているのではないかと期待したが、思ったほどではなかった。
最寄り駅も変わらず混んでいたし、車内も立っている人が多かった。
ただ、乗客が多いながらも降車駅での乗り降りはだいぶスムーズで、「ドアのそばにいないと降りそびれる」という恐怖は無くなったので、その点はだいぶ気が楽になった。

病院に着くと受付で検温と手指の消毒をし、運用が復活していた"検温済み・発熱無し"の紙切れをもらって待合室に向かった。
9:15頃に待合に到着したが、以前より30分遅く到着していることをすっかり忘れていたため、いつもより待っている人が多くてちょっと驚く。
空いている席へ向かおうとすると、診察室への呼び出し音声が流れ、すでに診察が始まっている時間であることに気づいた。それで「以前も9時を過ぎると待合が混み合ってきていたなぁ」と思い出した。

9時を過ぎているからか、検査室も活発に動いており、到着から5分ほどで採血に呼ばれた。
今回から、すべての患者が番号で呼ばれることになった(これまでは予約患者は名前で呼ばれていた)ので採血時に自分の番号が呼ばれてもすぐには反応できず、一瞬ポカンとしてしまった。
今回採血をしてくれた人は初めて見る技師さんだったが、注射がとても上手かった。採血時に痛みが無く、絆創膏を外した際にもほとんど出血が無かった。

採血を終えると再び待合に戻って診察に呼ばれるのを待った。
番号での呼び出しに変わったことで自分の呼ばれる順番がある程度予想が付くので、
「あと1人呼ばれたら次は自分の番だな。すぐだな」と思いつつ診察の準備をしていたら、使用済みヒュミラを持ってくるのを忘れたことに気づいた。
家を出るときカバンが妙にスカスカだと思ったのだが、注射もカートも入れていなければそりゃそうだと納得する。

待合室に到着した頃は待っている人が多くいたが、その後の20分くらいで内視鏡検査の人達が次々に呼ばれては説明を受け、準備に向かっていったので、9:30過ぎには待合は空いてきていた。
そんな中で、なかなか次の人が呼ばれないまま待っていると9:45頃になってしまった。
「今日も遅いのか・・」と思っていると、1つ前の人が別の診察室に呼ばれ、直後に私にも呼び出しがかかった。
「10分くらいしたら自分の番だな」と油断していたので、ちょっと虚を衝かれながら荷物をまとめて、「IBDの診察室は2つあるんだった・・」と思いながら診察室に急いだ。

「こんにちは〜。よろしくお願いしまーす」と言いながら診察室に入っていく。
「調子よさそうだね」と笑顔で言われながら問診が始まり、
今朝の便の状態も形がしっかりあったくらいで良い調子が続いているというようなことを話した。
便の回数(:2〜3回)や体重(:64kgを少し切るくらい、暑くなって歩数が減ったから気を抜くとすぐ増える・・)についてやりとりをし、「体重はずっと維持できてていいね」と言われる。
仕事の可否(:問題なく出来ている)も確認して、「血液もいいよー」と言われながら血液検査の結果に移る。

赤血球数がわずかに基準値を下回っている以外は、貧血関連の数値は良好で、「(免疫調整剤を使っているけど)白血球の数も問題ないね」ということだった。
CRPは前回よりは下がって0.8で、「(異常値だけど)このくらいなら全然大丈夫ですよ」ということだった。

 

 
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