くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

情報・知識

IBD患者の新型コロナウイルスワクチンについて

新型コロナウイルスに対するワクチンの供給は世界的に滞って予定より後ろ倒しになってきている。先日の報道では、私は一般より早い方(:「65歳未満の基礎疾患を有する(免疫を下げる治療を受けている)方」の区分)ではあるが、5月以降になりそうな雰囲気だ…

IBD患者の新型コロナウイルス感染症について(Japan IBD COVID-19 taskforceまとめ第15報)

全国的に新型コロナウイルスの新規陽性者数が減少を続けており、ワクチンの先行接種も始まり、第3波も収まりが見えてきたのかなという時期にこんな文章をまとめる。毎度のことだが、筆が遅いのでタイムリーな記事は書けないなぁと思う。 相変わらず、生物学…

IBD患者の新型コロナウイルス感染症について(Japan IBD COVID-19 taskforce第9報)

これよりも新しい内容の記事はこちら↓ cd-mo.hatenablog.com第2波の患者数がピークアウトしようとしている時期になり、情報としては時機を外しているような気もするが、今でも古い記事にときどきアクセスがあるので、たまにはデータのアップデートをしなくて…

クローン病の教科書

徐々に通勤が再開して、なんとなくいろんな事が億劫に感じる。在宅ワーク中も通勤と同じくらいの距離を歩いていたし、調子も良いのだが、好きなところを歩くのと職場へ行かされるのではやっぱり気分が違うようだ。 妻に「新しい記事が上がってない(読みたい…

治療法ごとの新型コロナウイルス感染症の重症化リスク 続報(Japan IBD COVID-19 taskforce第3報)

これよりも新しい内容の記事はこちら↓ 先週の記事で書いた、IBD研究班の新型コロナ特別チームの5/2付けの現況のまとめ(Japan IBD COVID-19 taskforce 第3報)がHP*1に掲載されている。 第2報とあまり変わらない部分 感染数の年代分布は、第1報では若年者(…

IBD治療方法ごとの新型コロナウイルス感染後の重症化率など(Japan IBD COVID-19 taskforce第2報)

かねてから予告されていた、厚労省補助金によるIBD研究班の新型コロナウイルス特別チームのHP*1が公開されている。公開資料は以前の記事でも書いた2種類に加えて、特別チームの設立趣旨や、4/19、4/24発表の、世界のIBD患者のデータが上がっている。 新型コ…

新型コロナウイルス感染症の治療に使われるかもしれない生物学的製剤

先週、「重症化した新型コロナウイルス感染症の治療にリウマチ薬が効果か」というニュースを何度も耳にした(例えばNHKのNews Web*1, *2)。関節リウマチの治療と言えば、近年の主力は生物学的製剤。ニュースで流れてくる薬の一般名もトシリズマブ。○○マブと…

クローン病の新型コロナウイルス感染のリスクについて(Japan IBD COVID-19 taskforce第1報)

【注意!】このページに書いてある内容は2020年4月時点で私が収集したもので、すでに古い情報となっています。 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のHP内の、COVID-19関連の特設ページ(URL: http://www.ibdjapan.org/task/index.html)では毎月IBD…

実は根拠の薄い脂肪の制限 その3(3/3)

<<その2からの続き>> なぜ脂肪制限をしているのか? 根拠が薄いのが分かっているのに、お前はなぜやっているんだ?と思うかもしれない。 私が脂肪の制限をしている理由は3つある。 調子が良くなるから、藁にもすがる、カロリー制限の3つがそれだ。 「脂肪の…

実は根拠の薄い脂肪の制限 その2(2/3)

<<その1からの続き>> 厚生省研究費による調査班のその他の報告 福田ほか(1998)以外にも、90年代の終わり頃までは、厚生省の研究費による調査班で脂肪に関する検討が複数行われている。 馬場ほか(1998)*1は、栄養療法の効果が、抗原性の無いアミノ酸によるも…

実は根拠の薄い脂肪の制限 その1(1/3)

クローン病と言えば脂質の制限。脂肪や食物繊維の摂取を制限する食事療法はいろいろなところで耳にする。この食事療法を強く推している医師もいる(例えばMedicalNoteの記事*1) 私も、(狭窄がないので)食物繊維は緩くしか制限していないが、脂質の摂取量…

生物学的製剤の種類により抗体の出来やすさが異なる

自分がヒュミラを使うようになったのもあって、二次無効の出やすさが薬によって異なるのかが気になっていたが、 この答えに近いものが川畑(2018)*1に載っていた。川畑(2018)は、エタネルセプトについて解説している論文だが、その文中で抗TNF-α製剤の抗体の…

レミケードの一次無効について

二次無効があるのに一次無効の記事がないのも気持ち悪いと思い、一応まとめてみる。一次無効とは、"初回投与から治療反応性が見られない"症状(遠藤ほか2012*1)のことである。 最初の3回の投与で効果が見られない場合にはこの一次無効であるとされ、他の治…

レミケードで狭窄は起こるのか?

レミケード治療中の消化管の狭窄の話はよく耳にする。レミケード治療をすると、狭窄が起きやすくなるようにも感じられてしまうが、本当だろうか? 基本的には「レミケードが狭窄を進行させることはない」というのが一般的な認識のようだ。 辻川ほか(2010)*1…

レミケードの使い方の変化:変わっていく治療法 その2(2/2)

その1からの続き ・Top-downとStep-up レミケードの登場で、クローン病の治療の方針にTop-down療法という考え方が生まれてきた。レミケードには従来の内科的治療法にはない「粘膜治癒が可能」、「外瘻の閉鎖効果」という大きな特徴がある。この特徴を活かし…

レミケードの使い方の変化:変わっていく治療法 その1(1/2)

レミケードがクローン病の治療に大きなインパクトを与え、強力な治療の選択肢であることは以前も今も変わらない評価であるが、その使われ方や治療戦略はこの20年足らずの間に変化している。レミケードのことを調べていると時々目にするエピソディック投与やT…

レミケードの二次無効への対策は? その3(3/3)

その1、その2からの続きの内容 3. 他の生物学的製剤への切り替え これは文字通り、レミケードの使用を止めて他の生物学的製剤へ変更するという方法である。 選択できる生物学的製剤が少ない日本では、まずヒュミラへのスイッチが一般的なようである。金井ほ…

レミケードの二次無効への対策は? その2(2/3)

前の記事「2. 既存の治療法との併用」の続き2-2. 血球成分吸着除去療法との併用 血球成分除去(CAP; cytapheresis)とは血中から白血球や顆粒球などの免疫に関わる細胞を除去することでクローン病の症状を抑える方法で、大腸病変を有する患者に有効とされて…

レミケードの二次無効への対策は? その1(1/3)

以前の記事でも書いたが、二次無効の原因が『レミケードの血中トラフ濃度の低下』であると考えられている。そのため、その対処はレミケードの血中濃度を下げないようにすることに焦点が当てられている。 レミケードの血中濃度を維持する具体的な方法としては…

二次無効の原因は? その2(2/2)

以下の3点は、本来の二次無効(レミケードの効果が弱まっていく)の原因ではないが、二次無効と同様にレミケードが効かなくなる原因についてである。 4. 抗TNF-α製剤の腸管からの漏出 田中ほか(2016)*1では、広範な病変がある場合には腸管からのレミケード…

二次無効の原因は? その1(1/2)

以前の記事に、二次無効がほとんどすべての患者に現れる可能性があるということを書いた。では、その二次無効の原因はなんだろうか。本稿と次稿ではそれらを列挙する。 本稿では、レミケードを無効化する、本来の意味での二次無効(レミケードの効果を増強で…

レミケードはいつまで効くのか? その2(2/2)

「レミケードはいつまで効くのか? その1」から続きの内容なので、「二次無効ってなんだ?」という人は下記の「その1」からどうぞ。 cd-mo.hatenablog.com ・二次無効の兆候を捉えることはできるのか? レミケード後に体調が悪くなったとして、それが二次無…

レミケードはいつまで効くのか? その1(1/2)

前回のレミケードの点滴から4週間を過ぎて、体調は下り坂に入っている。なんだかレミケードを点滴するたびに「薬の効果が薄れるのでは」と怯えてるような気がするが、それは二次無効という症例があるからだ。 ・二次無効とは 二次無効とは、金井ほか(2012)…

体重の変化

クローン病と診断されてから体重計に毎日乗るようになったのだが、体重の増減に一定の周期があるように感じた。それについて調べたお話。