くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

このブログへ到達した検索ワードについて

(他の無料のブログでも同様だろうが)はてなブログでは、自分のブログへどのような検索ワードで到達したのかわかるのだが、この検索ワードを見ていると他の人の疑問に思っていることがわかって面白い。
自分と同じ疑問を持っている人や、思いも寄らなかった言葉(内容)で検索して辿り着いている人、リウマチなど他の病気の人(この場合は生物学的製剤の名前や二次無効関連のワードとセット)もいて、別の角度から考えるのに良いので、たまにではあるが、興味深く眺めている。

そんななかで、ちょっと気になる+他のページでは書いてなさそうな内容が2つあったので、この記事でその2つについて書いておこうと思った。何かの役に立つことがあるかもしれない。


1つ目は、「ヒュミラ 冷蔵庫に入れ忘れた」という検索ワード。

言葉を見ただけで「あぁ・・」と惨状が目に浮かぶ。入れ忘れに気づいたときの気持ちをおもんぱかると・・・、気の毒である。
私はコレをやったことはないが、いつかやりそうだなと思っているので、
注射日を診察日にし(帰宅したら注射をするので注射の存在をウッカリ忘れにくい)、帰宅して手を洗ったら真っ先にヒュミラの準備と収納をするよう気をつけている。

ただ、コレを調べた、あるいは今後ココにたどり着く人は、すでに"やってしまった"人であろうから、「やらないようにする方法」では手遅れだろう。
なので、私がするであろう対処を書いておく。

ヒュミラを冷蔵庫に入れ忘れた場合は、私ならば、急いで冷蔵庫に入れた後、まずはかかりつけの薬局に電話して状況を話し、その後の対応を確認する。
ヒュミラは薬局で受け取っているであろうから、トラブルや疑問があればソコの薬剤師に相談するのが一番手っ取り早い。
薬のことは薬剤師と話して、その指示に従うのがベストだ。
すでに薬局が閉まっている時間ならば、ヒュミラは冷蔵庫へ入れたままにし、翌日薬局に確認する。
たとえ注射日だったとしても、常温で長く置いたヒュミラを自己判断で使うことは絶対にしない。
と、いうのが私の対処である。
もし冷蔵庫が故障してヒュミラが常温に戻ってしまった場合にもおなじような対処になるだろう。

ヒュミラのインタビューフォームには5℃(冷蔵)以外に、25℃、40℃で数ヶ月保存した場合の結果が示されているが、
薬液の変質や、ペン型ヒュミラではペンの動作異常が認められている。
これらの異常がどれくらいの短期間で起きるのかまでは調べられていないが、「通常の方法以外で保存した製品は使うな」というのが基本方針だろう。

以下は私見だが、
効果が弱まるだけ(これだけでもヒュミラの血中濃度が下がるので二次無効の引き金になり得るというリスクがある)ならまだ幸運な方で、
妙な副作用を起こす別の物に変質していたり、変質で有効成分の免疫原性が上がって二次無効やアナフィラキシーの元になったら大事なので、
薬局に相談した結果が「もう一度処方してもらってこい(病院に行って処方箋もらってこい)」だったとして、さらに主治医がとても怖い先生だったとしても、素直に怒られてくるのが絶対に良い。
投与時のショックや二次無効(いずれもレミケードで経験)をやっている人間としては、ショック症状を医療機関外で起こすのは非常に恐怖を感じるし、
治療の切り札を自分の横着で失うのは今後の人生でずっと後悔することになるだろうから絶対に避けるべき、と感じる。

 

もう一つの気になるワードは、「クローン病」「平均寿命」と「レミケード」についての検索だった。

どういう意図でこの内容を調べようとしたのかはわからないが、クローン病患者の寿命に関しては興味(心配?)がある人も多いのではないかと思う。
そこへレミケードが加わっているのは、「レミケードの登場で長期予後はどうなったのか?」とか、「レミケード(生物学的製剤)を使って寿命が縮むことはないだろうか?」というような疑問なのだろうか。

クローン病患者の寿命に関してはもちろん私も興味があって、発症から早い時期に大雑把には把握している。
クローン病の長期予後と合わせて記事にしたいとは昨年から思っているのだが、資料集めも頭の整理もなかなか上手く進んでいない。

とはいえ、そんなことを言っていてもしょうがないし、見に来た人も愚痴を聞きたいわけでもないだろうから、
私のいい加減(記憶違いや誤認、過小・過大な理解があるかもしれない)な状態の知識と考えを書いていく。読み直して確認していないので文献の引用はしないが、根拠がある内容と私見とはなるべく分けて書こうと思う("思う"や"考える"という語尾の内容は私見)。

さて、クローン病患者の寿命だが、
研究結果には大きく分けて「短くなる」と「そんなに変わらない」という2つの結果があるようだ。

決定的な調査は無いようだが、この結果からでも考えられることはある。

まず、寿命が長くなることはなさそう。
「病気になったんだから当たり前だろ」と思うかもしれないが、「小食で腸に負担を掛けずバランスの良い食事をしたので寿命が伸びる」なんて結果になったら、"極めて細く、長く生きる"ことになって、違う意味での苦痛がありそう。
研究結果から、そういうことはなさそうである。

他にも、調査結果が多くないことや、「そんなに変わらない」という研究結果があることから、極端に寿命が短くなることはないとも言えそうである。
寿命のような超長期間にわたる研究は、労力の割に得られる成果が少ないので普通は活発に研究されることは無い(;研究者は成果が出なければ研究費どころかキャリアすら失う可能性があるので別テーマの副次的な成果としてしかやらないだろう)。
ただし、研究者が「患者の死亡時の年齢が若い」のように感じるほどであれば重要なテーマであるので調査、研究が活発になる。そうなっていないことと、「寿命に有意差がない」というような結果が出てくることから、寿命が短くなるにしてもたいして短くなっていないのではないかと考えられる。
私としては、「ガンのリスクが上がることや症状が進行していくこともあるので、実際は寿命は短くなっている。しかし、頻繁・定期的に通院や検査を行うため、一般の人よりも発見や治療が早くなる傾向があるので、結果的に平均寿命は同じくらいになる」のではないかと考えている。

近年の日本語の医学誌のIBDに関する話題では、高齢の患者に対する治療がひとつのトピックになっている(;患者数が多く、壮年での発症がある潰瘍性大腸炎が話題の主である事が多いがクローン病も扱っている)。

このことを考えると、
クローン病の患者数がぐんぐん増えはじめて5,000人を超えたのが約30年前、発症者の多くが10代から20代であることから、現在問題になりつつある高齢患者は、80年代かそれ以前の患者が多いであろう。
その、治療の選択肢の少なかった頃からの患者でも高齢になるまでクローン病を抱えながら生き続けていることがわかる。そういう意味でも、クローン病患者の寿命は決して短くない。

ついでに、寿命にはほど遠いが長期間の生存率のデータとして、発症後の10年生存率は97%くらいあるらしいのでやはりすぐに死ぬ病気ではない。
3%程度が亡くなっているのをどう見るかは難しい。治らないという病気の性質や若年(まだ未熟かつ残りの人生は長く希望の多い時期)での発症が多いことから病気を受け入れることができず、治療拒否や効果の不明な治療を受ける人もいるようなので、3%の人の詳細がわからないとなんとも言えない。精神医療との連携でこの数字は改善する可能性もあるのではと個人的には思っている。

また、余談だが、
私が適当に論文を読んでいる感じだと、80年代頃までは少人数ではあるが患者の統計の中に死亡の報告が見られることがときどきあったが、近年は特殊な症例意外ではほとんど報告されない印象がある(近年は、標準的な治療をして若い年齢で死亡したならその症例だけを詳しく調べて論文になるくらい死亡例が少ない)。
生物学的製剤の登場で難治性の患者の治療が進んだことなどで生存率は改善した(QOLはまだまだだろうが)のではないかと思っている。


生物学的製剤の長期的な効果については明瞭な結果は出ていないだろう。
クローン病に効果のある生物学的製剤として最初に承認されたのはレミケードで、
日本で承認されたのが2002年(承認の早いアメリカでも90年代終盤からしか使用されていない)であるし、現在の維持投与が主流になってからは15 年程度の時間しか経っていない。
寿命の議論をするには短すぎる期間である。

また、「連続使用することで病態がどうなったか?」というような研究でも未だ有効なサンプル数が少なく明瞭な結果が出ないのではないかと思われる。

その理由はいくつか考えられる。

レミケードはキメラ抗体であるので二次無効の症状が出やすく、10年以上のような長期間継続して使い続けられている人はかなり少数であろうこと。
(※ 「レミケードとヒュミラを連続して使っている」ではダメ。レミケードが良かった(or 悪かった)のか、ヒュミラが影響したのか、2つをリレーしたことで何か起きたのかがわからないので、この研究の基本は、レミケードあるいはヒュミラ単剤の連続使用データが無ければ意味をなさない。そしてそれを取るのが難しい)

レミケードは生物学的製剤としてもかなり初期のものなので、出始めの頃は一般の医師に使用に対する心理的な抵抗があったのか、レミケードの効果や機序を説明する論文が医学誌に繰り返し載っている。
初期の頃は使用者自体が少なかった(=長期使用している可能性のある患者の母数自体が少数)可能性もある。

当初は生物学的製剤を最後の切り札として使っていたことも長期的な効果の評価を難しくしている。
現在は比較的短期間でステロイドなどの治療に見切りを付けて生物学的製剤の使用を開始するが、かつては既存の治療を繰り返してどうしようもない場合に最後の切り札的に使っていたようだ。
生物学的製剤は症状が進行した組織を元に戻す効果は無いので、腸管がキレイな発症初期に使った方が効果が大きいということがわかっている。
病歴の長い、腸管での症状が進行した患者が主であった頃からのデータでは、たとえ長期使用している患者が一定数確保できても、本当の意味での評価が出来ない。

そんなことがあるので、
レミケードやヒュミラ(これも近年は最初の生物学的製剤として使うことが増えたが、出始めの頃は実績のあるレミケードを選択したがったようだ)の長期使用者の数がある程度増えるまでは、その長期的な効果については述べられないだろう。
ただ、20年経っても積極的に使われ続けているということは、継続使用しても大きな問題はなく、少なくとも以前の治療より効果が高い場合がある(短期的には手術率が減るという記載もある)、ということは言えそうである。

つまり、今言えることは、
レミケードを使っても、平均寿命はクローン病では無い人と比べて、人並みか少し短い(ただし、今後の研究によっては「人並み」が優勢になったりや「寿命は昔のデータと同じぐらいだが良好な期間が長く続く」のように良い方向に傾く可能性はある)ということだろう。