くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

生物学的製剤の種類により抗体の出来やすさが異なる

自分がヒュミラを使うようになったのもあって、二次無効の出やすさが薬によって異なるのかが気になっていたが、
この答えに近いものが川畑(2018)*1に載っていた。

川畑(2018)は、エタネルセプトについて解説している論文だが、その文中で抗TNF-α製剤の抗体の出現率を、先行研究を元に記載している。
先行研究の詳細が記載されていなかったので、使用期間などは不明ではあるが、
抗体の出現率はそれぞれ、
インフリキシマブ(レミケード)8〜62%、
アダリムマブ(ヒュミラ)0〜51%、
ゴリムマブ(シンポニー)2〜10%、
セルトリズマブペゴル(シムジア)2.8〜37%、
エタネルセプト(エンブレル)0〜13%
 ※ カッコ内は先行品の商品名、私が加筆
と記している。

数値を見比べるとレミケードやヒュミラの抗体出現率が高いように見えるが、
桑名(2018)*2でも海外のレヴュー論文を引用して”インフリキシマブとアダリムマブの免疫原性が高い”と記しているので、2剤は抗体が出来やすい薬であると認識されているようだ。

この結果は関節リウマチに対しての結果であるので、クローン病でも同様の傾向とは限らない(そもそも川畑(2018)の主題のエタネルセプトはクローン病などの肉芽腫性疾患に有効性を示さない)が、薬剤の種類によって抗体の出来やすさ ≒ 二次無効の出やすさに差があるのは事実のようだ。

TNF-α以外のサイトカインに対する抗体製剤については、比較している論文を見つけられなかったが、抗TNF-α製剤と同様に薬剤の作用の仕方によって差がでると考えられそうだ。


キメラ抗体のレミケードはともかく、完全ヒト型のヒュミラでも抗体生成しやすいことは残念な情報だが、これらは初期に製品化された生物学的製剤であるので免疫原性を下げる対策があまりできていないのだろう。
これらより後になって開発され、免疫原性を下げる工夫がされているゴリムマブやセルトリズマブペゴルは数字が低くなっている。
エタネルセプトは5種の中で唯一レセプターに作用し、TNF-α生成細胞への攻撃も行わない抗体製剤なので、その違いが関係している可能性もある。

現在の生物学的製剤開発は免疫原性を減らす(身体に異物として認識させない)ことを目標の一つとして改良が進められているようだ。
抗体産生をさせないということは二次無効や投与時反応を心配しなくて良いということであり、長く安全に使える。
免疫の目をごまかせるなら、従来の生物学的製剤が使用不能になった場合にも効果があるかもしれないし、長期休薬後の薬剤再使用のリスクが小さくなればクローン病でもドラッグフリー寛解の議論が進むかもしれない。

二次無効で治療の選択肢が減った身としては、レミケードやヒュミラを過去の物にするような、今後の薬剤の開発・改良に期待したい。


*1:川畑仁人, 2018, <生物学的製剤を極める>2. エタネルセプト. Modern Physician, 38, 938-940.

*2:桑名正隆, 2018, <使い方と実際>2. 抗製剤抗体・免疫原性. Modern Physician, 38, 988-989.