くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

レミケードはいつまで効くのか? その1(1/2)

前回のレミケードの点滴から4週間を過ぎて、体調は下り坂に入っている。
なんだかレミケードを点滴するたびに「薬の効果が薄れるのでは」と怯えてるような気がするが、それは二次無効という症例があるからだ。

・二次無効とは

二次無効とは、金井ほか(2012)*1

5mg/kg,8週間隔の維持療法中に効果が減弱する,いわゆる"二次無効"症例が存在し,

とあるように、治療開始時は効いていたレミケードが、投与回数を重ねるうちに効果が弱まり、効いている時間が短くなっていく状態のことである。

"初回投与から治療反応性が見られない" 症状(遠藤ほか2012*2)を一次無効と呼び、それに対しての『二次』である。

この呼称に対しては、

2次無効は、当初効果があった薬剤が後で全く効かなくなる状態を指す。・・(中略)・・効果が減弱して症状が再燃するような症例。そうしたケースは2次無効というよりは効果減弱というほうが正しい

という意見(日経メディカル*3)もある。

専門家としては現象を明確に定義して区別することは重要なことだが、
患者レベルでは無効も減弱も「レミケードが治療の選択肢にならなくなる」という意味では同じことなので、本ブログ(次稿以降も含む)では無効化する場合も減弱する場合も区別することなく二次無効と記述する。
また、多くの資料では特定の薬剤を指すレミケードではなく、有効成分のインフリキシマブ(バイオシミラーの結果も含む)について記載している。分けて記載するのが正確であるが、ここではなじみのあるレミケード表記で統一する。

  

・二次無効が発生するのはどんな患者?

問題は、この二次無効が「どんな患者に現れるのか」という点だ。
特定の患者にのみ現れるのならば、それ以外の患者はレミケードを使い続けられることになるが、残念ながらそう甘くは無いようだ。

多くの資料で年率1割前後の二次無効症例が発生するとし、治療期間の経過と二次無効の発症率の関係(;治療期間が長いほど二次無効症例の割合が増えていく)に言及しているものもあるが、
発症する患者に関して特定の傾向があるという報告は無い。
現状では発症が早い・遅いの違いはあれど、皆に現れると思っていた方が良さそうだ。

 

報告されている二次無効の発症率をいくつか並べると、
金子ほか(2012)では、複数の海外の報告をまとめ、発現率25〜50%と述べているほか、著者らが治療に当たっている患者の30週時点で二無効の症状が出ていないものは55%(患者数148名)としている。
久松(2017)*4では、海外の結果を引用して発現率は約37%(年率13%)と記載している。
日経メディカル特別編集版の記事*5には "二次無効例の発生は、年に約10%とされ、10年で半分以上は効かなくなってしまうとみられている" との記載がある。

より直接的な統計データとしては横山(2017)*6があり、著者らの担当した67人の患者の長期間(>100ヶ月)の寛解維持率をプロットした図(維持率はほぼ線形の右肩下がりに見える)を示している。横山(2017)では年間7%、5年間で35%の患者に再燃が見られると述べている。

また、クローン病と同時期にレミケードによる治療が行われ始めた関節リウマチにおいても二次無効の問題が議論されている(例えば、佐藤ほか2011*7)。
二次無効の問題は病気の種別を問わず、レミケードを使う場合に必ずついて回る難題のようである。

 
続きは↓から

cd-mo.hatenablog.com

 

 

*1:金井隆典, 松岡克善, 久松理一, 岩男泰, 緒方晴彦, 日比紀文, 2012, インフリキシマブ二次無効の機序と対策,治療方針. 日本消化器学会雑誌, 109, 364-369.

*2:遠藤克哉, 諸井林太郎, 高橋成一, 木内喜孝, 下瀬川徹, 2012, クローン病に対するインフリキシマブの治療成績と遺伝子多型との関連. 消化器内科, 54, 77-82.

*3:土田絢子, 2013, SPECIAL REPORT 難病の自然史が変わる?: 抗体製剤でクローン病が劇的に改善 「粘膜治癒」が新たな治療目標に. 日経メディカル, 11号, pp.59.

*4:久松理一, 2017, 主題I:炎症性腸疾患診療の最前線: Ⅱ.Crohn 病内科的治療の最前線. 日本大腸肛門病学会雑誌, 70, 601-610.

*5:友吉由紀子, “特集 新たな展開を迎えた炎症性腸疾患の治療戦略 Part1: 増加し続ける炎症性腸疾患 生物学的製剤で難治例の治療は激変”. 日経メディカル Online,  2014年5月20日, https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/sped/1405gi/201405/536439.html.

*6:横山純二, 2017, 生物学的製剤が炎症性腸疾患の診療をどう変えたか一現状と課題. 新潟医学会雑誌, 131, 453-457.

*7:佐藤正夫, 清水克時, 竹村正男, 四戸隆基, 2011, インフリキシマブ効果減弱例における増量,期間短縮の検討. 臨床リウマチ, 23, 285-290.