くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

IBD治療方法ごとの新型コロナウイルス感染後の重症化率など(Japan IBD COVID-19 taskforce第2報)

かねてから予告されていた、厚労省補助金によるIBD研究班の新型コロナウイルス特別チームのHP*1が公開されている。

公開資料は以前の記事でも書いた2種類に加えて、特別チームの設立趣旨や、4/19、4/24発表の、世界のIBD患者のデータが上がっている。

新型コロナウイルスに感染したクローン病患者は4/20時点で400人超(Japan IBD COVID-19 taskforce 第2報(4/24版))と、統計的にはそれなりの数が集まってきている。

以前の記事と変わらない内容

以前の記事でも引用した、
IBD病患者が新型コロナウイルスに特別罹りやすいという報告は無い」というスタンスは変わっておらず(Japan IBD COVID-19 taskforce 第1報(4/19版)の7ページQ2)、やはりIBD病患者が目立って罹りやすい状況にはないようだ。
欧米は日本より一桁多いクローン病患者がいるのに感染者数は少ないというデータも、この考え方と矛盾しない。

また、「高齢者は重症化に注意が必要」という点も変わらず((Japan IBD COVID-19 taskforce 第1報(4/19版)の7ページQ3))で、
それがデータ(Japan IBD COVID-19 taskforce 第2報(4/24版)の3ページ)でも示されている。
(※ 私見だが、このデータを読むときは、70代以上の感染者数が少ない(20〜30人以下)ので割合が極端な数字になることや、医療のリソースが逼迫してトリアージを行っている欧米のデータが含まれているので、妙な数字になっている可能性があることに注意)

ここまでは以前の内容と変わらず、それを増強するものだが、
過去の記事で引用した以外の、注目すべき情報も出てきている。

潰瘍性大腸炎の患者は重症化リスクが高い可能性

その一つは、潰瘍性大腸炎で重症化リスクが高い可能性を示している点だ。
以前紹介したECCOの3次インタビューの要約では、IBDをひとまとめにしていたが、
Japan IBD COVID-19 taskforce 第1報(4ページ)では、クローン病潰瘍性大腸炎に分けて傾向を調べており、
潰瘍性大腸炎で重症化傾向が高い可能性を示唆している。
続く第2報(4ページ)では、より強く、"クローン病よりも1.5〜2倍高い"と明記している。
実際、第2報の数値は潰瘍性大腸炎の感染者の方が軒並み高い割合を示している。

クローン病患者が、集中治療室>人工呼吸器の使用>死亡と、
より重症になるほど割合が低下しているのに対し、潰瘍性大腸炎ではその割合があまり減っていかないように見えるのも怖いところである。

感染症対策をしっかりすることや、もし感染してしまったら、重症化リスクがある可能性を頭に入れて、先日発表された重症化の目安となる13の症状(例えばNHK News web*2)のような体調の変化に極力留意し、慎重に行動する方が良いだろう。

治療法ごとに入院率、重症化率が異なる

これも以前の記事で引用したものよりも細かい内容が示されている(Japan IBD COVID-19 taskforce 第2報(4/24版)の5, 6ページ)内容である。
「抗TNF-α製剤による治療が特別なリスクにはならない」ということは変わらないが、免疫調整剤との併用した場合など、5つのケースについて入院率や重症化率が示された。

示された5種のうち、抗TNF-α製剤単剤での治療がもっとも入院率、重症化率とも低い。サンプル数も200前後とそれなりの数があり、今後患者数が増えてもこの結果がそれほど大きく変わることはないだろう。

その他の治療については、感染者数が50人前後、それ以下なので心許ないところもあるが、
免疫調整薬単剤や、抗TNF-α製剤と免疫調整薬との併用が、同じくらいの値で抗TNF-α製剤単剤よりやや高い数値を示し、
さらに高い値にステロイド使用(※ ブデソニド(ゼンタコート)もステロイド)が来ている。
ステロイドについては重症化率も他の治療よりも高い値を示している(Japan IBD COVID-19 taskforce 第2報(4/24版)の6ページ)ので、ステロイドによる治療を受けている場合は、感染の可能性があれば慎重な行動が必要だ。

治療はどうする?

Japan IBD COVID-19 taskforce 第1報(4/19版)のQ4、A4(8ページ)では、「患者の全身状態が安定している方が大事で、勝手な自己判断で治療を中止しないように」ということが書いてあり、
「治療の中断についてはまだ確立された方針は無い」とある。

特設ページに掲載されているECCOの3次インタビューの要約でも、
炎症が感染症のリスクとなり得るのでそのコントロールが大事である。現時点では『治療の継続による恩恵 > IBD治療に伴う感染リスク』である」という旨が記載されており、治療をやめて症状が悪化することの方が危険であろう。

これからより詳しい解析結果が増えてくることであろうし、
治療について不安があるなら自分の主治医とよく話し合っていくべきだろう。

 

この記事の続報は↓

*1:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班, “Japan IBD COVID-19 taskforce”, 平成31年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班ホームページ, http://www.ibdjapan.org/task/index.html

*2:NHK, “NHK NEWS WEB 軽症者緊急性高い13症状のリスト公表 厚生労働省 新型コロナ”, NHKホームページ, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200429/k10012410261000.html