くろーんもーのクロ歴史

2018年の3月に35歳を過ぎてクローン病と診断されたおっさんの備忘録的なブログです。病状や治療のことを書き綴ります。

漢方薬についての私見 その1

最近書いた記事に、私が大ファンであるクローン病患者さん(まだブログを書く気も無い頃、たまたま見つけた彼のブログがわかりやすく、内容も優れていて、妻と読みあさった)からコメントをいただいた。

漢方薬について何か知らんか(※ 意訳)」というリクエストで、喜び勇んで記事を書こうと思ったのだが、
「うーん・・。知識が無ぇ・・」

全く調べてないわけでもないが、紹介できるほどちゃんと整理・理解できているものがない。

見識、・・などと呼べるモノでは無いが、私が考えていることはあるので、それでご勘弁いただこうと思う。

ブログのプロフィールにも書いているが、私は医学者でも医療従事者でもないただのクローン病患者に過ぎないので、以下の内容も素人の妄言に過ぎない。
読まれる方は注意されたし。



今から10年以上昔、私が大学院生だった頃に、製薬会社で長く研究職を務められている男性と一緒になる機会があった。
彼は、完全な管理職になりつつある状況に抗って少しでも研究現場にいるために新しい知識を得ようと、社会人として博士号を取りに来ていた(今思えば、すでに持っている学位(博士(薬学)?)以外の、生物や化学を専攻にした別の学位を取りに来ていたのかもしれない)。

ある程度慣れてきた頃にちょっとした好奇心から「漢方って効くんですか?」と聞いたことがある。
彼からの返答は「効きますよ!」という明るく元気なもので、否定するか、濁されると思っていた私には以外な感じがした。
その直後に、一呼吸置いてから付け加えた言葉も印象的だった。
「ただ、すごく効く人と全然効かない人に分かれます。だから(研究もしてるけど)薬にするのが難しい。」

当時は私が未熟であり、自分の専門分野の話でも無かったために、それ以上深い議論はしなかったけれども、この短いやりとりは今でも印象に残っている。


そんなこともあって、私は、漢方や東洋医学はしっかりと効果があり、西洋医学と相補的な関係にあると思っている。
どちらかが優位では無く、それぞれに得意分野があり、それぞれの優れた部分を利用し合って使うのがベストであるという考えだ。

とはいえ、今の私は漢方での治療は受けていないし、当面受ける気も無い。
情報収集はしているし、毛嫌いしているわけでも無いのだが、使いづらいのだ。

データが無い

IBDの治療に使う漢方薬と言えば、青黛の名前をよく目にする。

残念ながらクローン病には強力な効果が確認されないようだが、潰瘍性大腸炎では粘膜治癒の効果があるとも言われており、
医学誌のIBD治療の特集号では、(5-ASA製剤や生物学的製剤などと並んで)青黛についての論文が載っていたりもする。

この青黛は、中国では昔から使われていたようで、最近出てきたモノでは無いのだが、その割に研究は進んでいないようで、
有効物質のインドールの作用機序を明らかにするという基本的な研究が近年の科研費で通っていたりする(当然だが、どんなに偉い先生であろうと新規性の無い研究では公的なお金は付かない)。

効果があると言われている有名な物でもこの有様なので、漢方薬は科学的な検証がなされていないものが多く、効果(副作用も)がわかりにくく、判断がつかない。

副作用が少ないことは漢方薬の利点としてよく耳にするが、これも、まともなデータが蓄積されていないのなら怖い側面が考えられる。
"効果の個人差が激しい"のだとすると、それは副作用にも当てはまるはずで、「多くの人には副作用がでないけれど、稀に酷い副作用が出る」ことだって考えられる。
情報がないのはやはり怖い。

 

薬の特性がクローン病と相性が悪い

そもそも、分布がスプリットするようなデータを科学者は扱いたがらないので科学的なデータが少ないのだろうが、それを抜きにしても、
「効く効かないの差が大きい」という漢方薬の性質は、試験をしようとするとクローン病の性質と相性が悪い。

クローン病は、症状の幅がとても広い病気で、
突如寛解に至り30年間無治療で無症状という人もいれば、発症から数年で手術を経験し、30代で特殊な合併症ではあるが亡くなる人(昔ではなく'10年代の話だ)もいる。
症状の差だけでなく、急激に理由が不明なまま寛解したりすることもある。

こういう症状の変化が読めない、症状のバラツキが大きい病気に対して、効く/効かないの差が大きい薬を用いれば、
薬の効果で良くなったのか、たまたま自然に良くなったのか、
どういう症状だと良くなったのか、効かなかったのか、など効果がバラける故に解析が複雑になる。

こういうときは、多数の例で統計的に攻めるのがよいのだが、クローン病は患者数が少ないので、かなり大規模に試験を行わないと母集団が大きく出来ず、多因子での解析などできない。
治療の選択肢が増えた現在では、一つの治療法に多人数を集めるのはかなり大変だろう。

患者の少なさ、病態の大きな差があるクローン病に、効果がバラつく薬の検証はかなり相性が悪いのだ。
だから、クローン病漢方薬の効果検証がほぼされないというのは理解できる。


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